一番茶生産対策(平成16年度)

 昨年は、3月1日から生産履歴の記帳・管理を行う「かごしま茶安全・安心・信頼システム」がスタートし生産者の方々には大変な苦労もありましたが、県内外にかごしま茶の評価を得ることができたようです。今年もこの取り組みを我が家の経営改善につなげられるように進めて欲しいと思います。ところで、昨年秋期の気象は秋芽の充実に良好に働き、冬芽も十分な大きさになっていますが、11月の異常な高温で早生種や中切り園で再萌芽が認められました。
 今年の春期の気象状況によっては、きめ細やかな管理が必要になってきますので、茶期が始まる前に対策を練って下さい。

適期摘採につなげる茶園の観察

自分の茶づくり方針と茶工場の操業計画に添った適期摘採を行うため、現状の茶園の状況を確認し、これからの季節の変化をしっかりと把握し一番茶に備えましょう。
1.茶園の観察
(1)冬芽

茶園の芽の付き方・大きさ・数(頂芽、上位芽、下位芽の揃いとふくらみ)

・品種、樹齢、整枝、茶園の場所等によって異なる。
・上位芽は頂芽に比べ休眠が浅く、凍害を受けやすい。
 春先は早くから徐々に生育する。
・頂芽は一斉に生育し、下位芽は葉数が少なく共に出開きやすい。
・1~2月の気温は新芽の揃いに影響し、萌芽期以後の気温は新芽の伸びに影響する。

(防霜対策の徹底と新芽の生育予測による適期摘採)

(2)成葉

成葉の大きさ・色・手触り・樹勢、施肥管理、土づくり、地下部の根張りにより差がある。
・病害虫への抵抗性、被覆程度、荒茶品質(内容成分量、色沢)に影響する。

(環境保全型茶業を考慮した、樹勢を付けるための茶園管理)
2.季節(気象も含む)の変化の確認ここ数年の一番茶前の茶園と季節変化がどのように一番茶に影響したか、さらにその時の工場の操業計画は適切であったかを参考に対策を練る。

未来予測できないので、生物季節の変化を確認しながら、気象変動に十分注意する。下記に各種生物季節の変化と茶業試験場の一番茶前の萌芽期等を示したので参考にしてほしい。

3.情報を収集・分析し経営に活かす技術員、茶市場、県内外の茶業仲間、茶商、製茶機械メーカー、各種メディア等あらゆる情報を収集・分析し戦略を練り自分の茶づくりに活かす。

万全な防霜対策と再萌芽茶園の留意点

1.防霜開始時期に十分注意する。防霜開始は通常、摘採45日前を目安とする。
早生種や再萌芽した茶園は更に1週間(摘採55日前)程度早く実施する。
2.気象情報を有効に活用する。最近では詳細な地域別の情報がインターネット等で得られるので、最大限活用する。
3.再萌芽茶園の留意点ア 春整枝(化粧ならし)は、摘採機の刃の高さに十分注意して慎重に行いましょう。
   時期    早場地帯:2月下旬  遅場地帯:3月上旬
   ただし、今年は葉色の変化や芽の動きに注意して、おくれないようにする。

春整枝の高さ
基本的には、通常の春整枝の高さに準じる。
昨年の秋整枝面より切り下げない。
(ア)冬芽が展開している場合
   秋整枝面より5~10㎜上げて展開した冬芽だけを切り落とす。
(イ)出芽しているが展開していない場合
   秋整枝面より5㎜程度上げて、出芽した芽を切らないようにする。
(ウ)萌芽、もしくは膨らんでいる場合
   冬芽を切らないように秋整枝面と同じ高さで整枝する。

イ 2~3月気温が上昇すると、既に出芽している芽はそのまますぐに伸び始めるため、防霜対策を出芽の程度に合わせて平年より早めに開始する。

ウ 一番茶芽が不揃いになる可能性があり、摘採適期の判断が難しくなる。そのため、摘採時期には十分注意し、品質・収量を考慮して時期を決める。

良質茶生産対策

1.生葉管理
(1)摘採機の刈り葉の調整(刃研ぎ、すりあわせ)を摘採前に必ず実施する。また、刈り刃の切れ味も茶園全体で確認し、切れ方に偏りがないか確認する。
(2)寒風で黄変した茶葉の処理(特にゆたかみどり)は被覆期間の延長で対応する。
(3)摘採後は速やかに工場に搬入する。
摘採した生葉は直射日光に当てない工夫と、早めに工場に運び適切な生葉管理をする。
ア 生葉に傷を付けない。
イ 生葉に熱を持たせない。
ウ 生葉をしおらせない。
2.荒茶製造上の注意点
(1)原料に適した蒸熱を行う
昨年も市場で色沢の悪い物が多く見られた。原料を見極めて、クロロフィル含量に適した蒸熱時間の設定が必要である。
(2)気象変化に適した製造を行う
一番茶時期は、気温が低く、比較的天気も良いため空気がかなり乾燥する。
この時期は乾燥注意報が県内全域に頻繁に出されている。特に、早場地帯の生産時期は、空気の乾燥した日が多い。市場に上場された荒茶を見ても、かさついた硬い物があり、風量をうまく調整すれば良くなるものが多くある。
そこで、乾燥注意報などに注意し、空気の状態に応じてうまく風量を調整する。
(3)情報を活用する
市場性に応じた特徴ある良質茶生産と消費者ニーズに対応するため、市況、
市場情報を積極的に収集し、製造に生かす。
3.異物混入防止対策毎年徹底を呼びかけますが、荒茶段階でなかなか徹底しまぜん。
消費者の食品衛生管理に対する関心は、社会的に更に高まってきています。

「茶は食品、茶工場は食品加工場」

との強い認識を、徹底して自覚しましょう。

主な留意事項
(1)摘採前に必ず茶園面の落ち葉、雑草等を取り除く。
(2)茶工場は常に整理・整頓を徹底し、食品加工場として位置づける。
(3)乾燥後の荒茶は必ず篩分機を通し、頭は目視で異物を取り除いて出荷する。
4.乾燥・配合を徹底する
(1)荒茶の乾燥は十分に(茶は乾燥食品、含水率は4~5%)
(2)投入量は乾燥機の能力に応じて(深蒸茶は投入過多になりやすい)
(3)熱風温度 80~90度(軽微な火香は芳香)
   乾燥時間 20~25分(時間のチェックを)
(4)乾燥不足の原因
   温度不足  時間不足  投入量過多  風量過少  精揉の早出し
(5)出物(頭等)は再乾燥して出荷する。
(6)荒茶の配合は、配合機を積極的に導入して徹底する。
5.荷口まとめ
(1)大型機械利用や労働力の有効活用により共同計画摘採を実施し、コスト低減を図る。
(2)できるだけ合葉製造による荷口の取りまとめを行う。その際、合葉された生葉の履歴はしっかりと記帳する。
(3)入札、販売業務の円滑化のためにも荷口はまとめる。
6.桜島降灰対策
(1)製造前に必ず灰の付着がないことを確認する。
(2)洗浄脱水機は、生葉投入量、水使用量などの基準を守り、確実に除灰する。

生産履歴管理記帳の徹底

“かごしま茶の安全・安心・信頼システム”を確実なものにるため、茶業関係者一丸となって生産履歴管理記帳を徹底し、履歴開示請求に効率的に迅速に対応できるようにします。また、地域や茶工場での話し合いを行い、クリーンなかごしま茶づくりに取り組みましょう。
1.病害虫防除で留意すべき事項
(1)農薬使用基準を守る
農薬を使うときにラベルをみて、使用法を確実に守る。また、生産履歴台帳
への記入漏れ、記入ミスがないように注意する。
(2)摘採前使用時期の確認
摘採前の農薬使用時期が適切な時期か、かならず確認する。
(3)飛散防止
隣接園等への薬剤の飛散防止を徹底する。
(4)ハマキ天敵の活用
鹿児島が全国に誇れるハマキ天敵利用を基幹とした総合防除体制の維持・強化を図る。
2.茶市場
3.チェック運動を徹底する信頼されるお茶づくりのために次の項目をチェックします。

乾燥の徹底 配合の徹底 異物混入の一掃

さらに、個人や産地の信頼を失わないために次のことも徹底します。

委託申込書の生産履歴確認の記入
品種名の確実な記入
煙臭等の欠陥茶の一掃