一番茶生産対策(平成17年度)
昨年は,夏場の乾燥や度重なる台風襲来による風害,潮風害等の自然災害が発生し,栽培管理面では非常に苦労の多い年でした。
夏茶の市況は,ドリンク原料需要の高まりから,上下価格差もなく好調に推移したことから,過去最高の売り上げを記録した茶工場も多く見られました。しかしこの状況は,夏茶価格に支えられたものであったり,輸入緑茶も増加するなど決して手放しでは喜べない,今後に不安が残る状況であったことは確かで,茶業界が大きな変革の時代に入ったことを実感した年でした。
このような中で今年は,系列生葉農家を含めて茶工場の経営戦略をしっかり樹立し,昨年に負けない好調な年にするために,目標達成に向けて確実に歩んで行きましょう。
今年産茶の経営戦略
1.茶業情勢の変化
(1)飲用形態の変化によるドリンク茶の増加
一番茶を主体とするリーフ茶の消費の低迷
国産茶を使用したドリンク茶が確実に定着 → 夏茶需要の増加
200万キロリットルに迫る見込み(16年緑茶ドリンク生産量)
(2)下級茶利用増により輸入茶が増加
16年輸入量17,000tに達する見込み(過去最多輸入年13年 17,739tに迫る)
(3)一番茶主体の生産から夏茶を含めた年間を通じた収量・単価の確保
夏茶の単価,収量が増加し,一番茶主体の生産から夏茶の生産を含めて,
年間の生産体制を考慮した収量・単価の確保が必要。
年度 | 一番茶 | 二番茶 | 三番茶 | 秋冬番茶 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
16年 | 荒茶生産量 % | 130 (30.2) | 140 (32.6) | 100 (23.3) | 60 (13.9) | 430 (100) |
販売金額 % | 318 (50.5) | 181 (28.7) | 104 (16.5) | 27 (4.3) | 630 (100) | |
15年 | 荒茶生産量 % | 130 (35.1) | 110 (29.8) | 80 (21.6) | 50 (13.5) | 370 (100) |
販売金額 % | 311 (61.8) | 121 (24.1) | 56 (11.1) | 15 (3.0) | 503 (100) |
生産量は専技室で推計(一番茶は刈番茶を含む) 単価は県茶市場平均単価を利用
(4)かごしま茶の優位性
2.今年産茶の戦略
(1)工場間格差の是正
毎年,茶工場間に大きな格差が見られる
今年はどういう茶を作ろう → 系列生葉生産者も一緒に作戦会議
はっきりした目標,計画
具体的な目標
各茶期の収量は?単価は?品質は?栽培管理は?茶園づくりは?
(2)年間を通じた生産量,品質の確保
前述のような茶業情勢の中では,年間を通じてどう生産量,品質を確保していくかが大きな課題になります。
10a当たりの年間販売額をいくらにもっていくのか。
(3)経営的視点も含めて
コスト低減を具体的に何で行うのか
管理機械,製茶機械等の更新をいつ行うのか → 国の補助事業の削減
万全な霜害対策を
例年,防霜施設はあっても,毎年人為的なミスによる被害が必ずどこかで発生しています。 一番茶で霜害に遭うことは茶業経営にとっては大きな痛手です。失敗を絶対しないために万全 の対策が必要です。設置してから既に耐用年数を超えている防霜施設も多くなってきました。 早めに確実に稼働できるように準備をしましょう。
幼木園等で施設のない園では,トンネル被覆等を設置し霜害を防ぎましょう。
1.防霜開始時期に十分注意する。防霜開始は通常,摘採45日前を目安とする。
早生種や再萌芽した茶園は更に1週間(摘採55日前)程度早く実施する。
2.気象情報を有効に活用する。最近では詳細な地域別の情報がインターネット等で得られるので,最大限活用する。
3.利用上の留意点
(1)防霜ファン
・支柱の傾き,茶株面への角度が適切か,電気配線に損傷がないか
・回転や首振りが正常か,逆回転していないか
・センサーが正常に働くか氷水につけて温度計と合って作動するか
・設定温度は3℃
・センサーの感温部が葉層の中に埋もれないよう新芽の生育に
合わせて位置の調整
(2)スプリンクラー
・昼間に点検,整備を行い,配水管の破損,ノズルの目詰まり,ヘッドの回転状態
・温度センサーが正常か
・必要な水量が確保されているか
・設定温度は2℃
・水を止める時期は,気温が上がり氷が溶け始め,手で払ってバラバラ
落ちる時期湿害に配慮し,遅くまで散水しない
良質茶生産対策
一番茶の基本はやはり良質茶生産です。品質を確保した上でどう収量を確保するかが問題です。
1.春整枝
(1)春整枝(化粧ならし)は,摘採機の刃の高さに十分注意して慎重に行いましょう。
【時期】 早場地帯・・・2月下旬 遅場地帯・・・3月上旬
芽の動きに注意して,遅れないようにします。
春整枝の高さ
昨年の秋整枝面より切り下げない。
①潮風害等で冬芽が展開している場合
秋整枝面より5~10mm上げて展開した冬芽だけを切り落とす。
②出芽しているが展開していない場合
秋整枝面より5mm程度上げて,出芽した芽を切らないようにする。
③萌芽,もしくは膨らんでいる場合
冬芽を切らないように秋整枝面と同じ高さで整枝する。
2.施肥,防除
(1)施肥 適期適量施肥で肥効を高める
春肥は年間施肥量の40%程度,3回に分けて施肥する。
①春肥 第一回目 1月下旬~2月上旬
第二回目 2月下旬~3月上旬
②芽出し肥 摘採前25日頃
③夏肥一回目 一番茶摘採直後
(2)防除
①地区の防除暦を十分参考にして防除
②春季ダニ防除 2月下~3月上旬
葉裏に薬液がかかるように,更に畝の南側など発生が多いので特に丁寧に
③ハマキ天敵の散布
地区の発生予察に基づいて散布
④クワシロカイガラムシ 昨年は発生時期が乾燥していたため発生が多い
5月上,中旬 発生予察に基づいて防除
発生の多い園では一番茶後中切り更新をして徹底防除
3.摘採~計画摘採で良質生葉生産を~
①摘採前に系列農家を含めて摘採日の検討を十分に行い,工場処理能力を考慮して
②被覆は5日程度とし,摘採遅れにならないように
③一番茶芽の伸育状況を常に観察し,出開き度を予想して摘採適期を決定
④摘採機の刈り刃の調整(刃研ぎ,すり合わせ)を摘採前に必ず実施
⑤摘採前に茶園の落ち葉,木枝等は必ず取り除いて摘採する
4.生葉管理
①摘採後は速やかに工場に搬入する。
摘採した生葉は直射日光に当てない工夫と,早めに工場に運び適切な生葉管理をする。
ア生葉に傷を付けない。
イ生葉に熱を持たせない。
ウ生葉をしおらせない。
5.荒茶製造上の注意点
①原料に適した蒸熱を行う
昨年も市場で色沢の悪い物が多く見られた。原料を見極めて,クロロフィル
含量に適した蒸熱時間の設定が必要である。
②気象変化に適した製造を行う
一番茶時期は,気温が低く,比較的天気も良いため空気がかなり乾燥する。
特に,早場地帯では,空気の乾燥した日が多い。
市場に上場された荒茶を見ても,かさついた硬い物があり,風量をうまく調整すれば良くなるものが多くある。そこで,乾燥注意報などに注意し,空気の状態に応じてうまく風量を調整する。
③情報を活用する
市場性に応じた特徴ある良質茶生産と消費者ニーズに対応するため,市況,市場情報を積極的に収集し,製造に生かす。
6.異物混入防止対策
毎年注意を呼びかけますが,荒茶段階でなかなか徹底しません。
消費者の食品衛生管理に対する関心は,社会的に更に高まってきています。
「茶は食品,茶工場は食品加工場」との強い認識を持ちましょう。
【主な留意事項】
①摘採前に必ず茶園面の落ち葉,雑草等を取り除く。
②茶工場は常に整理・整頓を徹底し,食品加工場として位置づける。
③乾燥後の荒茶は必ず篩分機を通し,頭は目視で異物を取り除いて出荷する。
7.乾燥・配合を徹底する
①荒茶の乾燥は十分に (茶は乾燥食品,含水率は4~5%)
②投入量は乾燥機の能力に応じて (深蒸茶は投入過多になりやすい)
③熱風温度 80~90度(軽微な火香は芳香)
乾燥時間 20~25分(時間のチェックを)
④乾燥不足の原因 温度不足 時間不足 投入量過多 風量過少 精揉の早出し
⑤出物(頭等)は再乾燥して出荷する。
⑥荒茶の配合は,配合機を利用して均一配合に努める。
8.荷口まとめ
①大型機械利用や労働力の有効活用により共同計画摘採を実施し,コスト低減を図る。
②できるだけ合葉製造による荷口の取りまとめを行う。
その際,合葉の履歴記帳も行う。
③入札,販売業務の円滑化のためにも荷口はまとめる。
9.桜島降灰対策
①製造前に必ず灰の付着がないことを確認する。
②洗浄脱水機は,生葉投入量,水使用量などの基準を守り,確実に除灰する。
生産履歴管理記帳の徹底
”かごしま茶の安全・安心・信頼システム(生産履歴)”も3年目を迎えました。昨年の開示請求は16,000件を越えるもので開示に大変な苦労をしました。しかし,生産履歴を県内一斉 に取り組んでいる「かごしま茶」の評価は大きなものがあります。徐々にではありますが,かごしま茶」の銘柄確立にも大いに役立っていることは確かです。更に今後もこれらの取り組みをを確実なものにするため,茶業関係者一丸となって生産履歴管理の記帳を徹底し,履歴 開示請求に効率的に迅速に対応できるようにしましょう。また,地域や茶工場での話し合いを 行い,クリーンなかごしま茶づくりに取り組みましょう。1.病害虫防除で留意すべき事項
(1)農薬使用基準を守る
農薬を使うときにラベルをみて,使用法を確実に守る。
また,生産履歴台帳への記入漏れ,記入ミスがないように注意する。
(2)摘採前使用時期の確認
摘採前の農薬使用時期が適切な時期か,かならず確認する。
(3)飛散防止
隣接園等への薬剤の飛散防止を徹底する。
2.記帳,管理,開示
(1)栽培管理を行ったら確実に記帳を行う。
(2)開示の請求には速やかに対応する。
その際転記ミスが見られる場合があるので十分注意する。
(3)茶工場では各茶期ごとに系列農家の記帳状況の確認を必ず行う。