夏茶生産対策(平成17年度)

 今年の一番茶は,3月の低温により前年より7日前後遅れてのスタートとなりました。当初短期集中が予想されましたが,4月中旬以降も気温は低く推移したことから,品種間の差がみられた比較的余裕のある生産となりました。収量は,昨年夏の干ばつ,台風等の影響から,芽数が少なく芽伸びが悪かったことから,目標の収量を上げられない茶園も多く見られました。価格的には,開始当初は新茶待ちの中で高値取引になりましたが,生産量がまとまるにつれ値下げが急激に進み,中間・遅場産地にとっては厳しい年になりました。
 二番茶以降の夏茶については,昨年ほどの高値は期待できないものの,安定的な取引が予想されることから,品質・量を確保しながらの柔軟な生産対応が望まれます。

一番茶生産の反省

①今年の一番茶は,芽数が少なく芽伸びが見られず減収傾向であった。
  ・昨年の気象災害,夏茶を遅くまで摘み込んだ等の影響
  ・今年の3月の寒害
  ・病害虫の発生 赤焼病,ダニ,クワシロカイガラムシ
②県内産地の一部に晩霜害が発生 4月17日
  ・放射冷却による急激な気温低下で,防霜開始が遅れる
  ・センサー位置と茶園内部との気温較差が大きく,始動しなかった。

夏茶生産対策

1.夏茶生産の留意点

(1)良質夏茶の生産
 ①全国的な一番茶収量減の予想もある→品質・収量を確保した生産
   一番茶に配合可能な品質確保
 ②被覆し,芽格・色沢・水色 三拍子揃った夏茶生産を。
 ③市場状況を十分把握しながらの柔軟な対応
(2)欠陥・欠点茶を作らない
 ①気温・湿度ともに高い時期で,特に梅雨時期も挟む。
   生葉管理の徹底,摘採から製造をスムーズに
 ②水色の赤みの改善
   水色の赤みは価格への影響が大きい。
 ③乾燥を十分に
   特に梅雨時期や頭などの出物は注意が必要
 ④煙臭等出さぬようこまめに掃除を。操業中は特に注意すること。
(3)園相づくりを考えた葉層の確保
 ①樹勢の強い揃った秋芽を作るためには,一節上げて葉層の確保を
 ②最終摘採日を厳守し,目標とする来年の一番茶の芽数・芽重を確保するための園づくりも考慮して摘採する。
 ③病害虫防除を適期に行い,樹勢の確保を

2.これからの夏茶管理

(1)二回整枝の実施各茶期の芽の揃いを良くし,品質確保の面からは重要な作業
(平年の場合)

 ・萌芽してくる芽を切らないように整枝の高さには十分注意する。
 ・気温が上がると,各茶期間の日数は短縮されるので注意する。
(2)施肥
 ・各地区の施肥設計に基づいて,摘採後できるだけ早く施肥する
 ・環境に配慮した施肥が求められているので,適正施肥に努める。
(3)病害虫防除
 ・各地区の防除暦に基づいて適期防除に努める。
 ・安全使用期間の厳守
   安全使用期間に十分注意して,確認の上防除する。
 ・赤焼病の多発茶園は葉層回復を
   昨年赤焼け病の多発した茶園では,一番茶後中切り・深刈りをして伝染源となる病葉を切除する。
 ・ハダニの防除
   多発茶園では,一番茶後防除を行い密度低下を
 ・クワシロカイガラムシは発生孵化時期を確実に把握してから防除する。
   茶園ごとに発生時期が異なるので,技連会の発生情報を十分参考にする。
(4)被覆による品質向上
 ・日数 4~5日 (直接被覆)
 ・被覆の開始時期を間違わないように(摘採遅れはかえってマイナス)
 ・二番茶(梅雨時期)期は,高温多湿になるため黒葉腐れ病が発生する場合
  があるので注意する。
 ・樹勢の弱い園では被覆は行わない。
(5)摘 採
 ・適期摘採で良質生葉の確保
    夏茶は気温が高く,早く硬葉になりやすい。摘採適期が短いので注意する。
    二番茶は梅雨時期と重なるので摘採遅れにならないように注意する。
 ・摘採機の摘採スピードと回転数の調整及び刃の調整
    生葉の2度切りやささくれは水赤の大きな原因になる。
 ・計画摘採と適切な生葉管理で鮮度保持
    葉傷みは水色が赤くなり,品質低下が著しい。
(6)中切り更新による樹勢回復
 ・時期 できるだけ早い一番茶後が望ましい。
 ・中切り後の整剪枝
    第1回目  中切りより55~60日目頃  中切り位置より  3㎝上げて
    第2回目  7月下旬~8月上旬       前回より     3~4㎝上げて
    秋整枝   10月上中旬            前回より     4~5㎝上げて
 ・二番茶まで摘採する場合は,摘採直後深刈りを行う。
 ・中切り後の萌芽から生育初期を重点に,ウンカ・スリップス・炭疽病等
  早めの防除を行う。
 ・中切りした年は断根を伴う強い深耕はしない。
(7)台風対策
 ・新植園など幼木園では台風襲来に備え,間作など防風対策を計画的に実施する。

3.夏茶製造のポイント

(1)一般的製造
 ①蒸 熱
  ・生葉形質を考慮して蒸す。
  ・夏茶は組織が硬く,大形,色沢の黒みになりやすい(一番茶より5秒程度長く)。
  ・蒸機の胴回転数は一番茶より遅く(5回程度),逆に攪拌軸は早く(50回)。
  ・蒸熱の後に蒸葉処理機を設置した工場では,熱風温度に注意する。
   熱風温度が高すぎると葉緑素の熱変成が起き,色を悪くする。
 ②粗 揉
  ・茶温は35~36℃が適当
  ・揉み手バネ圧・・・一番茶より0.5kg程度強める。
  ・熱風温度,風量に十分注意する。晴天日には少なく,雨天日には多めとする。
 ③揉 捻
  ・一番茶に比べ,原料が硬くなっているので,加重をかけ十分揉み込む。
   ただし,一番茶並に時間をかけると水赤になったり苦渋味が強くなるので注意する。
 ④中 揉
  ・茶温は36℃が適当
  ・バネ圧,回転・・・夏茶は容積重が軽いのでバネ圧は一番茶より弱く,回転は遅くする。
  ・排気温度,風量に十分注意し,上乾きをさせない。
   中揉機は外気の影響を受けやすいので給気湿度に応じ風量調整をする。
 ⑤精 揉
  ・茶温(投入10分後)は,43℃程度が適当
  ・温度を上げて無理に能率を上げると,「むれ」「色沢の褐変」が生じ,
   品質低下になる。

 ⑥乾 燥
  ・乾燥時間は長く,十分に
  ・乾燥不足が市場で指摘が多い。頭などの出物は必ず再乾燥を。
  ・精揉の早出し,深蒸し茶は乾燥不足になりやすい。
  ・風量は一番茶に比べて多めとする。
(2)濡れ葉製造の留意点夏茶,特に二番茶は梅雨時期と重なり,濡れ葉での製造の機会も多くなる。
無理して濡れ葉で製造する必要はないが,やむを得ない場合は次の点に留意して製造する。
 ①生葉取り扱い
  ・付着水が多い場合には,脱水機にかけてできるだけ早く蒸す。
  ・生葉管理装置には詰め過ぎない。濡れ葉の状態では,嫌気状態になり異臭
   (キャバロン臭)が発生する。連続送風時間を長くする。
 ②蒸 熱
  ・濡れ葉は蒸機への投入量を付着水分に応じ調整する。重量換算で付着水の
   分だけ投入量を増やし,投入量の増加分だけ蒸気量を増やす。
 ③葉打・粗揉
  ・葉打機の熱風発生機に余裕があれば,投入量を付着水の分だけ増やす。
  ・付着水が取れるまでは最大風量とする。
  ・空気湿度が高まる時期は全体に茶温が高くなりやすい。
   茶温に注意し,熱風温度を上げずに風量を増やす必要がある。
 ④中 揉
  ・外気の影響を最も受けやすい工程であるので,雨の日は風量を増やす必要がある。
 ⑤乾 燥
  ・雨の日は乾燥不足になりやすいので,風量,乾燥時間を増やす。
(3)欠点茶,欠陥茶を製造しない
 ①水色が赤い
  ・原因・・・ア,摘採機の刃が切れない。
        イ,摘採から製造まで時間がかかる。
        ウ,製造中の高温(粗揉,中揉,精揉,乾燥)
        エ,茶工場の掃除不足
 ②ササ色
  ・原因・・・ア,硬葉混入による不揃い
        イ,蒸し不足
        ウ,風量が多く上乾き(粗揉,中揉)
 ③煙 臭
  ・中揉,乾燥機の火炉の掃除はこまめに一日数回
 ④乾燥不足
  ・茶市場で最も指摘が多い。乾燥は十分時間をかけて
  ・頭等の出物は必ず二度乾燥をする

生産履歴の記帳管理

昨年は,一年間で2万件を越える開示請求があり,その対応に大変な苦労があったが,今年も昨年を上回る件数が予想される。「かごしま茶」の有利販売・安全証明のために大きな評価を得ていることも事実で,更に今後もこれらの取り組みを確実にするため,茶業関係者一体となって生産履歴管理の記帳を徹底し,開示請求に効率的に迅速に対応する。
(1)開示請求に迅速な対応を
 ① 昨年,請求から開示報告までに日数が掛かっており,この日数の短縮が強く求められている。
   請求から報告まで5日以内に出来るよう,茶工場毎に確実に準備する。
 ②「茶れきくん」の普及拡大
   既に今年の一番茶にも多くの開示請求がきているが,「茶れきくん」導入
   工場では茶市場でスムーズな開示処理が行われている。
   未導入工場ではぜひ検討を行って欲しい。
(2)病害虫防除で留意すべき事項
 ①農薬使用基準を守る。
   農薬を使うときにラベルをみて,使用法を確実に守る。
   また,台帳への記入漏れ,記入ミスがないように注意する。
 ②摘採前安全日数の確認
   病害虫の発生が多くなる夏茶では,摘採前の農薬安全使用日数が十分確保できているか,かならず確認する。
 ③飛散防止
   隣接園等への薬剤の飛散防止を徹底する。
   隣接の他作物からの飛散にも注意する。