一番茶生産対策(平成18年度)

 昨年の本県茶業は,大きな気象災害もなく各茶期を通じてほぼ順調な生産がなされました。荒茶生産量は,摘採面積の伸びにより過去二番目の24,000t程度となる見込みです。市況については,県茶市場における年平均価格が前年比90%の1,299円/kgとなり,ドリンク茶飲料の原料需要の落ち着きから価格が平年並みに戻ったと考えられます。リーフ茶の消費動向は,依然として厳しい状況にあり,特に一番茶の上級茶がこれまでに比べて弱含みの状態が続いており,茶業経営においても今後ともこれらを念頭においた取り組みが強く求められています。
このような中で今年は,系列生葉農家,組合員を含めて茶工場の経営戦略をしっかり樹立し,好調な年にするために,目標達成に向けて確実に取り組みを進めましょう。

今年産茶の経営戦略

1.工場間・生産者間格差の是正
今年はどういう茶を作ろう → 系列生葉生産者も一緒に作戦会議
はっきりした目標,計画
具体的な目標
各茶期の収量は 単価は 品質は 栽培管理は 茶園づくりは       
2.年間を通じた生産量,品質の確保
現状のような茶業情勢の中では,年間を通じてどう生産量,品質を確保していくかが
大きな課題になります。
   10a当たりの年間販売額をいくらにもっていくのか
   各茶期ごとの生産量,販売金額は  〃

3.経営的視点も含めて コスト低減を具体的に何で行うのか → 重油等燃料費の高騰
 管理機械,製茶機械等の更新をいつ行うのか → 国の補助事業の削減

万全な霜害対策を

例年,防霜施設はあっても,毎年人為的なミスによる被害が必ずどこかで発生しています。一番茶で霜害に遭うことは茶業経営にとっては大きな痛手です。失敗を絶対しないために万全の対策が必要です。設置してから既に耐用年数を超えている防霜施設も多くなってきました。早めに確実に稼働できるように準備をしましょう。
幼木園等で施設のない園では,トンネル被覆等を設置し霜害を防ぎましょう。
1.防霜開始時期に十分注意防霜開始は通常,摘採45日前を目安とする。
早生種や再萌芽した茶園は更に1週間(摘採55日前)程度早く実施する
2.気象情報を有効に活用最近では詳細な地域別の情報が携帯電話,パソコン等で得られるので,最大限活用する。
3.利用上の留意点
(1)防霜ファン
  ・耐用年数を過ぎたファンの接合部の錆,亀裂等はないか
  ・支柱の傾き,茶株面への角度が適切か 電気配線に損傷がないか
  ・回転や首振りが正常か 逆回転していないか
  ・センサーが正常に働くか氷水につけて温度計と合って作動するか
  ・設定温度は3℃ センサーは園で一番低い温度のところに設定温度を合わせる
  ・センサーの感温部が葉層の中に埋もれないよう新芽の生育に合わせて位置の調整
(2)スプリンクラー
  ・昼間に点検・整備を行い 配水管の破損 ノズルの目詰まり ヘッドの回転状態
  ・温度センサーが正常か 必要な水量が確保されているか
  ・設定温度は2℃
  ・水を止める時期は,気温が上がり氷が溶け始め,手で払ってバラバラ落ちる時期湿害に配慮し,遅くまで散水しない

良質茶生産対策

一番茶の基本はやはり良質茶生産,品質を維持した上でどう収量を確保するかが課題です。
1.春整枝
(1)春整枝(化粧ならし)は,摘採機の刃の高さに十分注意して慎重に行う
   時期 早場地帯 2月下旬  遅場地帯 3月上旬
    芽の動きに注意して,遅れないようにする
   春整枝の高さ
    昨年の秋整枝面より切り下げない 冬場に風で立ち上がった葉先を切る程度
2.施肥,防除
(1)施肥 適期適量施肥で肥効を高める
    春肥は年間施肥量の40%程度,3回に分けて施肥する。
  ①春肥  第一回目 1月下旬~2月上旬
         第二回目 2月下旬~3月上旬
  ②芽出し肥 摘採前25日頃
  ③夏肥一回目 一番茶摘採直後
(2)防除
  ①地区の防除暦を十分参考にして防除
  ②ポジティブリスト制度(後の頁参照)が5月から施行される
     農薬の飛散防止には十分注意する
  ③赤焼病 例年発生する園では注意
     春の強風後,春整枝後 銅水和剤で防除
  ④春季ダニ防除  2月下旬~3月上旬
   昨年の一番茶は発生が多く,大変苦労した。発生が多い場合は二回散布も必要
   葉裏に薬液がかかるように,更に畝の南側など発生が多いので特に丁寧に
  ⑤ハマキの防除
      地区の防除方針に基づいて,ハマキ天敵,ハマキコンNのいずれかで防除
     ハマキ天敵の場合は地区の発生予察に基づいて散布時期を守る
  ⑥クワシロカイガラムシ  昨年は発生時期が乾燥していたため発生が多い
      5月上,中旬 発生予察に基づいて防除
      発生の多い園では一番茶後中切り更新をして徹底防除
3.摘採 計画摘採で良質生葉生産を
①摘採前に系列農家を含め,工場処理能力を考慮して摘採日の検討を十分に行う
②被覆は5日程度とし,摘採遅れにならないように
③一番茶芽の伸育状況を常に観察し,出開き度を予想して摘採適期を決定
④摘採機の刈り刃の調整(刃研ぎ,すり合わせ)を摘採前に必ず実施
⑤摘採前に茶園の落ち葉,木枝等は必ず取り除いて摘採する
4.生葉管理
①摘採後は速やかに工場に搬入する
 アルミシート等で直射日光に当てない工夫と,早めに工場に運び適切な生葉管理を
 生葉を無理に袋に詰め込んだり,運搬の際積み重ねたりしない
②工場で小さな箱形コンテナに長時間入れる場合は,連続送風では萎凋しやすい
5.荒茶製造上の注意点
①原料に適した蒸熱を行う
  原料を見極めて,クロロフィル含量に適した蒸熱時間の設定が必要である
②気象変化に適した製造を行う
   一番茶時期は,気温が低く,比較的天気も良いため空気がかなり乾燥する
  荒茶でかさついた硬い物がある。乾燥注意報などに注意し空気の状態に応 じてうまく風量を調整する
③情報を活用する
  市場性に応じた特徴ある良質茶生産と消費者ニーズに対応するため,市況,市場情報を積極的に収集し,製造に生かす。
6.異物混入防止対策
生葉や荒茶段階で異物混入防止対策が徹底していない工場が散見されます。消費者の食品衛生管理に対する要望は,更に高まってきています。
「茶は食品,茶工場は食品加工場」との強い認識が必要
【主な留意事項】
 ①摘採前に必ず茶園面の落ち葉,雑草等を取り除く
 ②茶工場は常に整理・整頓を徹底し,食品加工場として位置づける
 ③茶工場で働く人に対する食品衛生管理面の教育も必要
 ④乾燥後の荒茶は必ず篩分機を通し,頭は目視で異物を取り除いて出荷する
 ⑤桜島降灰対策には万全の対策を
7.乾燥・配合の徹底
乾燥不足・配合不良で取引保留になる事例が見られます。十分な対策が必要です。
 ①荒茶の乾燥は十分に (茶は乾燥食品,含水率は4~5%)
 ②投入量は乾燥機の能力に応じて (深蒸茶は投入過多になりやすい)
 ③熱風温度 80~90度 (軽微な火香は芳香)
   乾燥時間 20~25分  (時間のチェックを)
 ④乾燥不足の原因 温度不足 時間不足 投入量過多 風量過少 精揉の早出し
 ⑤出物(頭等)は再乾燥して出荷する。                       

 ⑥荒茶の配合は,配合機を利用して均一配合に努める
8.荷口まとめ
①大型機械利用や労働力の有効活用により共同計画摘採を実施し,コスト低減を図る
②できるだけ合葉製造による荷口の取りまとめを行う。その際,合葉の履歴記帳も行う
③入札,販売業務の円滑化のためにも荷口はまとめる
9.事故防止対策
①乗用摘採機等の運搬の際は,道路交通法を遵守する
②一番茶の製造は,連続の長時間操業になることが多いので,交代人員を確保する
③機械に巻き込まれない服装や,機械掃除・修理点検の際は必ず電源を切って行う

生産履歴管理記帳の徹底

”かごしま茶の安全・安心・信頼システム(生産履歴)”も4年目を迎えました。昨年の開示請求は20,000件を越える見込みですが,生産履歴を県内一斉に取り組んでいる「かごしま茶」の評価は大きなものがあります。「かごしま茶」の銘柄確立にも大いに役立っていることは確かです。更に今後もこれらの取り組みをを確実なものにするため,茶業関係者一丸となって生産履歴管理の記帳を徹底し,履歴開示請求に効率的に迅速に対応できるようにしましょう。
1.病害虫防除で留意すべき事項
①農薬使用基準を守る
  農薬を使うときにラベルを確認し,使用基準を遵守
②摘採前の農薬使用時期が適切な時期か,かならず確認
③飛散防止 隣接園等への薬剤の飛散防止を徹底
2.記帳,管理
①栽培管理を行ったら確実に記帳を行い,記入ミスに注意
②茶工場では各茶期ごとに系列農家の記帳状況の確認を必ず行う
2.開示は確実に,迅速に
①開示の請求は速やかに対応する
 その際転記ミスが見られる場合があるので十分注意する
②各茶工場では,製造の際生葉搬入と同時に履歴を提出してもらって工場で管理する
 開示請求があったら茶工場段階で迅速に開示を行う
③「茶れきくん」の導入工場では,正確で迅速な対応がされている 
 まだ導入がされていない工場では組合員と話し合い,導入について前向きな検討を行う

農薬のポジティブリスト制度について

1.ポジティブリスト制度とは 食品の農薬残留基準 → 食品衛生法によって各農薬(有効成分)・作物ごとに定められる
これを越えた場合流通・販売が禁止される
 現行制度で基準値のないもの → 検出されても流通禁止の規制はない
食品衛生法の改正(平成15年5月)
   すべての農薬について作物ごとの残留農薬基準を設定し,それを越える農薬が含まれる農作物の流通を禁止することになった
 ⇒ この制度を ポジティブリスト制度という  平成18年5月から施行
2.制度の概要現在,日本国内で 244成分・130作物について残留基準が設定されている
世界中で使用されている農薬は約700成分あると言われている
  これらについて平成18年度の制度実施までに科学的根拠に基づいた基準値設定は無理
 そのため
   コーデックス規格(食品の国際規格)
   登録保留基準 ⇒ これらを参考に暫定基準値を設定
   海外の残留基準
この暫定基準を設定できない農薬 → 一律基準 0.01ppm を設定(H17年1月)
3.ポジティブリスト制度とドリフト(農薬飛散)の問題 茶で利用する農薬は登録農薬であり,基準を遵守して防除すればほとんど問題はない
 しかし,ポジティブリスト制度の施行により
    他作物からの
    他作物への  → 農薬のドリフト(飛散)が問題になることが予想される
残留基準がない場合 0.01ppmが適用されるため
4.ドリフト防止対策  これまでもドリフト防止対策には十分注意してきたが,今後更に徹底が必要
・風向,風速に注意  ・高温時の散布は控える    ・噴口の向きには注意
・散布圧を上げない  ・ノズルの選択(霧無し噴口) ・飛散防止のカバーの取り付け
・境界に遮蔽ネットの設置