秋の茶園管理(平成19年度)

 今年の夏茶は,梅雨による長雨の影響で雨の合間をぬいながらの生産となり,被覆を見送ったり,摘採・製造の遅れ等もあり,大型・色沢不足・水赤等の欠点茶も多くみられました。価格的には一部の芽格・色沢・水色の揃ったものは引き合いも強かったものの,水色が赤いものなど極度に品質の劣るものについては,厳しい取引となりました。この様に厳しい年ではありましたが,秋冬番茶についてもある程度の需要は見込めることから,単価を見ながらできる限り可能な範囲での取り組みをお願いします。秋の茶園管理についても,今後の秋管理を徹底し,意欲を持って来年の一番茶に備えたいものです。また,今年の茶生産状況を反省しながら,経営的にも変化していく今後の茶業経営を今一度しっかり見据える時期でもあります。

秋の茶園管理の重要性

三(四)番茶までの厳しい状況での摘採を終え、今樹勢が衰弱した状況にあり、来年の一番茶を考えると早急に樹勢を取り戻すために、以下の三つの代表的な秋の管理作業は非常に重要な作業になります。時期を失しないように、生葉生産者の意欲を喚起しながら徹底した茶園管理を行いましょう。
秋の茶園管理は全ての項目のバランスが重要

秋の管理作業・整枝、最終摘採・病害虫防除・施肥管理・深耕・有機物投入        

(1)健全な秋芽の伸育と葉層の確保
今年は、各茶期間の生育期間が平年よりやや長かったことから、三・四番茶がやや遅れ気味で、最終摘採時期の判断が難しくなった。

・ 最終摘採日の厳守と 葉層を確保した三(四)番茶の摘採
  来年の一番茶を意識した最終摘採に努める
・ 秋芽の健全な伸育  →  病害虫防除の徹底
台風害、潮風害対策の徹底

来年期待される一番茶のための冬芽の形成
(2)根の健全な生育と土づくり
・ 来年1年間利用される吸収根の確保―深耕
・ 土壌改良
・ 土壌の物理性、化学性の改善    
・ 養分の補給と施肥管理の徹底施肥
(3)秋冬期の冬芽の防寒・防霜対策
・ 秋冬期防霜の実施  
・ 順調な耐凍性の獲得
開発センター茶業部では、ホームページで耐凍性の獲得状況を11・12月随時公表しています。    
http://www2.kiad.pref.kagoshima.jp/

具体的な秋の茶園管理

1.最終摘採の留意点

① 葉層確保を念頭に、三(四)番茶の摘採を若干上げる。
       →基部までの摘採は、秋芽が伸びずに芽数型になる。
② 最終摘採日まで日数的に余裕がある場合は、芽の出揃いを待って摘採
       →秋芽の芽揃いが良くなる。
③ 最終摘採日の厳守
  秋芽を大きく伸育させるには、最終摘採日を厳守することが大事
 ア, 最終摘採日
  秋整枝日までに20℃以上の平均有効積算温度(日平均温度-20℃の累計)が
   やぶきた    250℃以上(最低)~300℃
   ゆたかみどり  280℃が必要。
 イ, 最終摘採日の目安
   熊毛地区   8月18~20日   県南部       8月10~12日
   県中・北部  7月30~8月5日   山間・高冷地   7月20~31日
 ウ, 徒長枝が多い場合は、8月中~下旬に徒長枝を除去する

2.健全な秋芽の伸育と葉層の確保

(1)病害虫防除
① 三(四)番茶摘採直後
    輪斑病・・・常発,多発茶園では計画的な防除が必要
    摘採又は整枝後3日以内の防除
② 秋芽生育期
    秋期の病害虫防除は、翌年の親葉となる秋芽を作るためにも,翌年の発生源となる密度低下のためにも極めて重要である。
   第1回目 萌芽期~1葉期  最終摘採から18~20日目頃
   第2回目 2葉期~3葉期     〃      28~30日目頃
   ・ 炭そ病 新梢枯死症 ウンカ スリップス ハマキ ホソガ等
   ・ やぶきた等炭そ病に弱い品種は1,2回目とも殺菌剤と殺虫剤の混用散布
   ・ 病害では1回目は予防効果のある剤、2回目は治療効果のあるEBI剤を用いる。
③ 秋芽生育後期 9月上中旬頃
    クワシロカイガラムシ ハスモンヨトウ等
    ・ クワシロカイガラムシの発生面積率は、昨年今年と拡大してきている。
   園の内部まで良く観察し、初期発生を確実に押さえる。
     幼虫孵化最盛期を確認して防除する。
    ・ 秋冬番茶を摘採する園では,安全使用日数に十分注意する。
④ 秋整枝後
    カンザワハダニ
    ・ 越冬ダニの発生量が翌年の発生量を左右するので重要な防除になる。
      今年の一番茶前は発生が多く、防除に苦労した。
    ・ 高精製マシン油剤は、耐凍性の獲得の遅れ、赤焼病の発生を助長するので、散布する場合は1月以降とする。
⑤ 赤焼病
    ・台風、季節風、寒害等の後の発生が多いので、初発生を認めたら直ちに防除を行う。(2)秋整枝のポイント
① 時期
  秋整枝時期が遅れると翌年の一番茶の収量、品質に悪影響が出るので遅れないように注意する。
  ア,平均気温が20℃以下になった旬
  イ,熊毛地区  10月下旬~11月初旬 県南部 10月下旬
     県中・北部 10月上旬~中旬    山間高冷地 10月上旬頃を目安にする
  ウ,遅れ芽の発生しにくいやぶきた、晩生品種はやや早めに実施しても良い。
② 方法
  整枝後の葉層は8cm以上確保するようにする。
  ・四番茶摘採園は、秋芽の生育が劣るため、徒長枝と頂芽の葉先を切り落とす
   程度とする。
  ・三番茶摘採園は、秋芽の2葉を残す(最終摘採位置より3~5cm上げた位置)
  ・徒長枝の多い園や伸び過ぎた園は、日焼け防止として、秋整枝5~7日前に
   上部をあらかじめ軽く切り落としておく。
  ・秋冬番茶を製造する場合は,深く摘採し過ぎることのないよう注意する。
③ 秋整枝後,再萌芽した場合の対策
  ア,再整枝の目安
   ・再萌芽数が多少あっても翌年の収量・品質にはほとんど影響はない。
    少ない茶園では放置し、翌春化粧ならしを行う。 
   ・20×20cm枠内で再萌芽数が20本を越える場合は再整枝する。

3.根の健全な生育と土づくり

(1)茶の新根は秋期に大部分が出る
来年1年間使う新根が出やすい環境を作ってやることが、土づくりの基本である。
① 完熟堆肥、敷草で土壌の物理性、化学性、生物性等を改良
  ・完熟堆肥を8月中から下旬に苦土石灰と同時に施用し、深耕まで行う。
   未熟堆肥は、新根に害を与えるので使わない。
  ・表土流亡防止、踏圧の軽減と有機物補給のために、10a当たり1~2t(2~400束)程度の敷草を投入する。
② 土壌の化学性を改良するためpH4以下の土壌では、苦土石灰を10a当たり5袋程度施用
③ 完熟堆肥、苦土石灰施用後の深耕で土壌を軟らかくし、 通気を良くする。
  ・樹勢が弱っている茶園や中切り園の深耕は翌年以降とする。
  また好天が続き、乾燥が予想される場合も中止する。
(2)適正施肥で樹勢の回復を
① 樹勢回復、樹勢強化のため秋肥は早めに分施する。
  ・最終摘採直後と9月上旬に窒素成分で、10a当たり8kgを越えない範囲で
   施肥する。
  ・土壌中の窒素濃度をみると、秋は必要以上に濃度の高い事例が多く見られて
   おり、環境保全の面からも春肥より施肥量を減らす。
   また、有機配合割合の高い肥料を施用する。

4.干害,台風・潮風害対策を十分に

(1)干害対策
① 好天が続き、幼木園で干害が心配される場合は、かん水を行う。
  ・かん水量の目安としては、幼木園では5日おき20mm。
  ・敷き草は干害防止には非常に効果が高い。
(2)台風・潮風害対策
① 台風の襲来に備え、防風垣の設置、散水施設の点検、排水溝の整備などを確実にする。
  ・幼木園では台風で地際部が回されたり倒伏の恐れがあるので、土寄せを行ったり、地上部が過繁茂している場合は、整枝を行う。
② 台風通過後の潮風害対策のための散水は速やかに行う。10a当たり 5t以上(2時間以上)
  ・潮風害を受け,樹勢が著しく弱った茶園では、秋整枝は避けて春整枝をする。
  ・秋整枝の時期と程度は、潮風害を受けた時期と程度によって変わってくる。
③ 赤焼病の常発園では傷口からの感染の恐れがあるので銅剤等で防除する。

5.冬芽の凍害回避のための秋冬期防霜

(1)冬芽の特性冬芽の種類(形成位置)によって特性が異なる。
    休眠の深さ   頂芽  > 下位芽 > 上位芽
    水分含有量  上位芽 > 下位芽 > 頂芽
    凍害発生率  上位芽 > 下位芽 > 頂芽
(2)秋冬期防霜
① 早生品種(ゆたかみどり,あさつゆ)や中切りしたやぶきた等で秋冬期に凍害を
受け、芽つぶれを起こす茶園がみられる。これらの品種は特に注意が必要である。
  ・秋冬期防霜は防霜ファンやスプリンクラーで行う。
② 秋冬期の防霜が必要な期間は,初霜期から平均気温が10℃を恒常的に
下回る12月末頃まで。
  ・秋冬期の防霜設定温度は春期に比べ低めとし、初霜時は2℃,12月では0~-2℃程度
(3)幼木園での幹割れ対策
① 今年,又は昨年定植した幼木園は「幹割れ」が予想されるので、7月中に施肥を終える。エン麦等の間作を早めに植え付けを行い、初霜期の防霜対策を確実に行う。
  ・株元の敷き草は、温度低下を招くので冬期は、株元から離して畦間に寄せる。
  ・品種別裂傷型凍害(幹割れ)抵抗性

 強弱品種名
弱い

強い
ゆたかみどり、めいりょく、おくゆたか、べにふうき
あさつゆ、おくみどり、さえみどり
やぶきた、あさのか

今年の茶業経営の総まとめを

1.現状の分析と認識                                       
一番茶価格が低迷 ← リーフ茶消費の低迷
販売金額の減少 → 経費の増加 → 所得の減少
(1) 今年度茶業実績の分析と反省
 ・ほ場別・茶期別・年間の生産量、単価、販売金額等はどうだった 生産履歴の活用
 ・経営の分析 経営全体、単位面積当たりの経費(コスト)が増加か、減少か
 ・所得の分析 販売金額―経費=所得がどうなった
これらの数字が、1年前、3年前、5年前、10年前とどう変化してきたか
→ 今後はどうなっていくかの予測2.経営のビジョン(経営改善計画)を持とう
・経営分析を踏まえ、今後どうなるのか、今後をどうしていくのか
     ↓

経営ビジョン

(1)経営ビジョン達成のために
 3年後、5年後、10年後の経営をどうしていくのか
    ↓

経営改善計画

製茶機械、乗用管理機等の更新は茶園面積はどれくらい必要後継者が継続できるか
・認定農業者になった時の経営改善目標は?実現しているか
10年後はこうありたい→では5年後はここまで→3年後はここまで→来年はここまで

長期計画中期計画短期計画

各年度ごとにやるべきことを明確にしておけば、今やるべきことがより具体的になる
3.経営改善の実践
・来年度の経営戦略 ← 来年実現しなければならないこと
・中・長期計画を実現・実践するために
 自分個人で何とかできる 努力すること (資金調達、人員確保、栽培管理、経営管理等)
 行政・指導機関の手助けが必要なこと (補助事業、土地集積、制度資金等)
自分個人でできること、手助けが必要なことを明確に区分し、手助けがいる場合は早めに相談
ビジョンづくり、経営改善計画づくりは家族全員、茶工場組合員全員で現状を理解し、目標・方針を共有して、全員が同じ目標に向かって進むことが一番大切なことである。