一番茶生産対策(平成20年度)

 昨年の本県産茶は,一番茶は2月の低温や4月上旬の一部霜害等で減収しましたが,中盤以降は天候の回復により増収になりました。二番茶以降は長雨の影響を受け,摘採遅れ等による品質低下がみられたものの,年間の荒茶生産量は前年を3%上回る24,100t程度が見込まれ,16年産の25,200tに次ぐ年になりました。 市況については,一・二番茶の前半は前年より好調に経過しましたが,各茶期の後半と三・四番茶は茶期を通しても厳しい状況でした。県茶市場における年平均価格は,前年比105%の1,250円/kgとなりました。リーフ茶の消費動向は,依然として厳しい状況にあり,特に一番茶の上級茶が弱含みの状態が続いており,茶業経営への影響が懸念され,今後の対応が強く求められています。 このような中で,今年から始まるクリーンな「かごしま茶」づくり第六期対策で,安心・安全に対する取り組みを更に強化するため「かごしま茶生産工程管理(かごしま茶基礎GAP)」への取り組みをスタートさせますが,かごしま茶の有利販売に向けて一丸となった取り組みが期待されます。

今年産茶の経営戦略

1.茶業情勢(19年産茶)  
・国内生産量の減少―――気象災害,価格低迷により全国的に生産量は減少している。
・輸入茶の減少―――――「ポジティブリスト制度」の影響から2割近く減少する見込み。
・ドリンク茶は停滞―――濃い味,旨みなどの特徴を追求した製品開発が進む。
            原産地表示」の義務化で国産茶使用が加速するか。 
・リーフ茶は厳しい―――リーフ茶消費量は依然として減少傾向が続いている。
・食の安心・安全は更に強い対応が求められる。 
2.平成20年産茶の見通し  
・国内産茶の生産量減,輸入茶の減少により過年度産茶の在庫整理が進んだか
・ドリンク茶の原産地表示義務化決定が追り,夏茶の状況は回復できるか
・国内の他産地茶園面積は,減少傾向が続いている。
3.平成20年産茶に求められること  
産地の特徴を生かした良質茶生産が基本となる。
この良質茶生産を基本に市況や気象変化に対して臨機応変の対応
安心・安全な茶―――生産履歴開示の徹底,茶生産工程管理(GAP)への取り込み
(1)年間を通じた生産量,品質の確保
   現状のような茶業情勢の中では,年間を通じてどう生産量,品質を確保していくかが大きな課題になる。
   10a当たりの年間販売額をいくらにもっていくのか。
   各茶期ごとの生産量,販売金額は   〃    。

(3)経営的視点も含めて
   経費の増加が懸念    重油等燃料費の高騰 機械,資材の高騰
   コスト低減を具体的に何で行うのか
   管理機械,製茶機械等の更新をいつ行うのか

万全な霜害対策を

例年,防霜施設はあっても,毎年人為的なミスによる被害が必ずどこかで発生している。昨年は,防霜施設能力を越えて温度が下がったため被害を受けた例も見られた。一番茶で霜害に遭うことは茶業経営にとっては大きな痛手であり,失敗を絶対しないために万全の対策が必要である。設置してから既に耐用年数を超えている防霜施設も多くなってきている。早めに確実に稼働できるように準備を行う。
幼木園等で施設のない園では,トンネル被覆等を設置し霜害を防ぐ。
最近,防霜ファンの電線盗難の被害が発生している。施設の定期的な見回りも必要。
1.防霜開始時期に十分注意防霜開始は通常,摘採45日前を目安とする。
早生種や再萌芽した茶園は更に1週間(摘採55日前)程度早く実施する。
2.気象情報を有効に活用最近では詳細な地域別の情報が携帯電話,パソコン等で得られるので,最大限活用する。
3.利用上の留意点
(1)防霜ファン
  ・耐用年数を過ぎたファンの接合部の錆,亀裂等はないか。
  ・支柱の傾き,茶株面への角度が適切か 電気配線に損傷がないか。
  ・回転や首振りが正常か 逆回転していないか。
  ・センサーが正常に働くか氷水につけて温度計と合って作動するか。
  ・設定温度は3℃ (必要以上に設定温度を高くしない)
  ・センサーは園で一番低い温度のところに設定温度を合わせる。
  ・センサーの感温部が葉層の中に埋もれないよう新芽の生育に合わせて位置を調整する。
(2)スプリンクラー
  ・昼間に点検・整備を行い 配水管の破損 ノズルの目詰まり ヘッドの回転状態
  ・温度センサーが正常か必要な水量が確保されているか。
  ・設定温度は2℃
  ・水を止める時期は,気温が上がり氷が溶け始め,手で払ってバラバラ落ちる時期とし,湿害に配慮し,遅くまで散水しない

良質茶生産対策

一番茶の基本は第一に良質茶生産,品質を維持した上でどう収量を確保するかが課題。
1.春整枝
(1)春整枝(化粧ならし)は,摘採機の刃の高さに十分注意して慎重に行う。
   時期 早場地帯 2月下旬  遅場地帯 3月上旬
       芽の動きに注意して,遅れないよう
   春整枝の高さ
    昨年の秋整枝面より切り下げない。冬場に風で立ち上がった葉先を切る程度。
2.施肥,防除
(1)施肥 適期適量施肥で肥効を高める
   春肥は年間施肥量の40%程度,3回に分けて施肥する。
  ①春肥  第一回目 1月下旬~2月上旬
         第二回目 2月下旬~3月上旬
  ②芽出し肥  摘採前25日頃
  ③夏肥一回目  一番茶摘採直後
(2)防除
  ①地区の防除暦を十分参考にして防除する。
  ②ポジティブリスト制度が一昨年5月から施行された。
   農薬の飛散防止には十分注意する。風向き,隣接茶や作物
  ③赤焼病 例年発生する園では注意する。
   初発生をみたら直ちに一回目の防除を銅水和剤で行う。
  ④春季ダニ防除  2月下~3月上旬
   昨年の一番茶後は発生が多く,大変苦労した。発生が多い場合は二回散布も必要。
   葉裏に薬液がかかるように,更に畝の南側など発生が多いので特に丁寧に散布する。
  ⑤ハマキの防除
   地区の防除方針に基づき,ハマキコンN,ハマキ天敵のいずれかで防除する
   中切り,深刈り等の更新予定園では更新後に設置する。
   ハマキ天敵の場合は地区の発生予察に基づいて散布時期を守る。
  ⑥クワシロカイガラムシ
   5月上・中旬 発生予察に基づいて防除する。
   発生の多い園では一番茶後中切り更新をして徹底防除する。
3.摘採 計画摘採で良質生葉生産を
  ①摘採前に系列農家を含め,工場処理能力を考慮して摘採日の検討を十分に行う。
  ②被覆は5日程度とし,摘採遅れにならないように。
  ③一番茶芽の伸育状況を常に観察し,出開き度を予想して摘採適期を決定する。
  ④摘採機の刈り刃の調整(刃研ぎ,すり合わせ)を摘採前に必ず実施する。
  ⑤摘採前に茶園の落ち葉,木枝等は必ず取り除いて摘採する。
4.生葉管理
  ①摘採後は速やかに工場に搬入する。
    アルミシート等で直射日光に当てない工夫と,早めに工場に運び適切な生葉管理を。
   生葉を無理に袋に詰め込んだり,運搬の際積み重ねたりしない。
  ②工場で生葉コンテナに長時間入れる場合は,100%連続送風では萎凋しやすいので,冷却後は間断送風又は風量を50%程度減らし連続送風とする。
5.荒茶製造上の注意点
  ①欠点茶,欠陥茶を作らない。
   市場取引において毎回乾燥不足や煙臭などの欠点茶,欠陥茶が見られる。製造上の一寸したミスによるもので,荒茶の評価を大きく落としている。万全の注意をする。
  ②原料や気象変化に適した製造を行う。
   生葉の品質を十分に見極め,原料に合った蒸し程度で製造する。硬葉を無理に蒸し崩さない。荒茶でかさついた硬い物があるので空気の乾燥状態に応じて風量を調整する。
  ③情報を活用する
    市場性に応じた特徴ある良質茶生産と消費者ニーズに対応するため,
    市況,市場情報を積極的に収集し,製造に生かす。
  ④茶工場の効率的な操業に努める。
   燃料代がかなり高騰している。計画摘採により生葉を連続して製造できる体制を作るとともに,工場の効率的操業を行う。
6.異物混入防止対策
生葉や荒茶段階で異物混入防止対策が徹底していない工場が散見される。消費者の食品衛生管理に対する要望は,更に高まってきている。
「茶は食品,茶工場は食品加工場」との強い認識が必要である。
【主な留意事項】
  ①摘採前に必ず茶園面の落ち葉,雑草等を取り除く。
  ②茶工場は常に整理・整頓を徹底し,食品加工場として位置づける。
  ③茶工場で働く人に対する食品衛生管理面の教育も必要である。
  ④乾燥後の荒茶は必ず篩分機を通し,頭は目視で異物を取り除いて出荷する。
  ⑤桜島降灰には万全の対策を行う。
7.乾燥・配合の徹底  
乾燥不足・配合不良で取引保留になる事例が見られる。十分な対策が必要である。
  ①荒茶の乾燥は十分に (茶は乾燥食品,含水率は4~5%)
  ②投入量は乾燥機の能力に応じて (深蒸茶は投入過多になりやすい)
  ③熱風温度 80~90度(軽微な火香は芳香)
   乾燥時間 20~25分(時間のチェックを)
  ④乾燥不足の原因 温度不足 時間不足 投入量過多 風量不足 精揉の早出し
  ⑤出物(頭等)は再乾燥して出荷する。
  ⑥荒茶の配合は,配合機を利用して均一配合に努める。
8.荷口まとめ
  ①大型機械利用や労働力の有効活用により共同計画摘採を実施し,コスト低減を図る。
  ②できるだけ合葉製造による荷口の取りまとめを行う。その際,合葉の履歴記帳も行う。
  ③入札,販売業務の円滑化のためにも荷口はまとめる。
9.事故防止対策  
  ①乗用摘採機等の運搬の際は,道路交通法を遵守する。
  ②一番茶の製造は,連続の長時間操業になることが多いので,交代人員を確保する。 
  ③機械に巻き込まれない服装や,機械掃除・修理点検の際は必ず電源を切って行う。

かごしま茶生産工程管理(かごしま茶基礎GAP)に取り組もう

”かごしま茶の安全・安心・信頼システム(生産履歴)”も6年目を迎えた。昨年の開示請求は27,000件を越える見込みであるが,更にこれからの取り組みを確実なものにするため,クリーンな「かごしま茶」づくり第六期対策でかごしま茶生産工程管理(かごしま茶基礎GAP)を茶業関係者一丸となって取り組むことになった。主旨を十分理解し,確実な取り組みをお願いしたい。
1.かごしま茶生産工程管理(かごしま茶基礎GAP)とは
①茶は生産段階において,残留農薬・異物混入・病原微生物等の危害が生じる恐れがある。
②これらの危害要因を事前に分析し,農作業のチェックリストを作成し,
③これを基に農作業を点検・記録して改善に役立てる という手法。 
これまで取り組んできた生産履歴開示やクリーンな茶づくり等を項目化してチェックするという取り組み。
2.取り組みの内容
①チェックリストの内容は,県茶業会議所のクリーンな茶づくり専門委員会で既に作成。
②茶園管理チェック表・・・生葉生産段階でのチェック表
 茶工場チェック表・・・・茶工場段階でのチェック表
 このチェック表は県茶生産協会から印刷,配布される
③チェックする時期は,各茶期が終了した時
④この取り組みは20年産一番茶から(20年3月)スタートする
3.取り組みのメリット
①安全なかごしま茶を求める消費者の声に応えることは勿論
②この記録を基に各生産者個人が作業の改善を行えば,コスト低減や品質向上により茶業経営上も大きなメリットになる。
 消費者はもとより,自分の茶業経営江確立のために全員でこの取り組みを進めよう。