令和2年度 夏茶生産対策

はじめに

 今年の一番茶は,4月下旬まで低温が続き,県内各産地で芽の生育を待っての生産となりました。このため,茶の大形化が避けられた一方,色のりが不十分で,強風による葉擦れが生じるなど対応に苦慮しました。茶市場相場は,芽格の良い製品も多く生産されましたが,近年のリーフ茶の消費低迷に加え,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う新茶セールの自粛などで,全般に低調で品質による価格差の大きい展開となりました。
 夏茶は良質茶生産を基本に,来年の一番茶を見据えた樹勢のある茶園づくりに努めるとともに,経営環境の厳しさが増していますので,家族や工場,地域などで今後の方向性について話し合いを進めることが重要です。また,本年一番茶から,摘採前であることを茶園の周辺ほ場管理者にお知らせする「お知らせ旗」の設置に積極的に取り組んで下さい。

1 夏茶生産の留意点

(1)芽格・色沢・水色の三拍子揃った良質茶生産が基本

  • 大形や白茎の目立つもの,飴色,笹色,かさつき,水色の赤みなどは評価が低い。
  • 欠陥・欠点茶は表1により事前に予防し,万一発生した場合は改善に努める。
表1 茶市場取引に大きく影響する上場茶の指摘事項の要因と対策

(2)蒸熱工程

  • 硬葉原料は,攪拌軸の回転数を速くし打圧を効かせ,茶葉を柔らかくする(乾燥工程での水分の表面への拡散を助け揉みやすくなる)。
  • 夏茶原料は茶葉のpHが一番茶に比べ低いため,原料の質以上に蒸しを進めたり,極端な能率重視(高茶温製造)は,色沢低下(緑色→黄色→褐色)を起こす。

(3)葉打~乾燥工程

  • 夏茶製造用の設定へ調整する(粗揉もみ手バネ圧を強め,葉浚い間隔を広める)。
  • 上乾きしやすい硬葉原料では,茶温を幾分高め,水分の表面への拡散を助けることで色沢が維持される。
  • 乾燥機内の温度が90℃以上で過乾燥(含水率3%以下)となった場合,荒茶色沢が低下するため,温度を下げ風量を増加するか,時間を長くする。
  • 湿度の高い夏茶期は乾燥不足となりやすいので,乾燥程度のチェックを行う。
    (茶をつぶして粉になる,青茎がポキッと折れる,含水率4~5%,水分計活用)

(4)異物混入の防止

  • 異物への消費者の目は厳しい。茶は配合が前提で異物混入が発生するとロット全体に影響が出るため細心の注意が必要。
  • 茶園から茶工場までの異物混入要因のチェック項目を整備し,防止策を徹底する。
表2 混入の可能性が高い異物と対策

2 農薬の適正使用の徹底

(1)農薬飛散防止対策を講ずる

  • 隣接ほ場の耕作者と収穫時期,農薬散布時期等の情報を連絡し合うなど連携して飛散防止に努める(ほ場に収穫前を示す「お知らせ旗」を掲示する)。
  • 風向き,風の強弱などに留意し,風の強い日の散布は避ける。

(2)ラベルをしっかり確認し,農薬の使用基準を遵守する。

(3)農薬散布後は防除機やノズル,ホース等散布器具は十分洗浄する。

(4)「かごしま茶」の安全性を証明するため,農薬の散布履歴は必ず記帳する。

3 茶園管理の留意点

(3)更新技術による樹勢回復

  • 中切りは一番茶摘採後を基本とし,深刈りは6月15日頃までに行う。
  • 深刈り後の最終摘採は,最終摘採時期に2節上げて整枝する。但し,整枝時に切 断位置が褐色に硬化している場合,その後の秋芽の生育が遅れるので,時期を早め て実施するか,茎が緑の部分に上げて実施するとよい。
  • 樹勢低下茶園や長期間更新をしていない園では,樹勢回復を目的にしつつも翌年の減収幅を抑えるために,2カ年かけて段階的に二番茶後深刈りを行う。1年目は前回位置から上げて浅めに深刈りし,翌年は前回更新付近から下げて深刈りする。

(4)最終摘採時期の遵守(遅れると冬芽形成が遅れ,一番茶は減収する)

  • 地域の最終摘採時期を基準として,三,四番茶の可否を決める。樹勢も考慮。
  • ‘ゆたかみどり’など四番茶摘採が難しく秋までの生育期間が長くなる場合(例;三番茶が7月10日以降),三番茶を遅らせて上げ摘みするなど調整する。
  • 最終摘採位置は一節は上げて,葉層を確保する(秋芽が伸びる)。

4 経営改善に向けた取組

(1)経営改善の基本的な考え方

  • 経営改善の方法として,規模拡大(まずは現状の規模で最大の利益を実現する)やコスト低減,販売対策(販路拡大,ネット販売等),新規茶種・技術の選択,複合化などがある。これらは経営計画に基づき,個人で難しいものは地域で取り組む。
  • コスト低減についてはかなり進められてきているが,徹底した見直しを図る。

単位当たり生産費を下げる = (変動費を下げる(ア)+固定費を下げる(イ))/ 生産量を上げる(ウ)

  • 変動費を下げる。
    土壌分析に基づいた適正施肥,発生予察情報の活用による適期防除,資材の共同購入,作業・摘採計画による効率化,管理機・製茶機械の適正な使用等。
  • 固定費を下げる。
    機械・施設の点検整備や丁寧な作業による耐用年数の延長,利用面積の拡大,機械・施設の共同利用,複合経営による利用等。
  • 生産量を上げる。 
    「単位当たり生産費」を下げるためには,コスト削減の視点だけでなく,規模拡大や単収向上による生産量の増大も有効。但し,技術の高度化が重要。

(2)荒茶1kg当たりの加工経費

  • 平成25年度までに実施された調査では,荒茶1kgの直接費は275円(H22~25平均),間接費は141円(同)で計416円(同)となっている(原材料費除く)。
  • 自工場の加工経費や生葉生産費について算出し,コスト管理を行う。

(3)主な融資と新型コロナウイルス感染症に伴う支援制度

  • 運転資金や設備投資等の借り入れ等を行う場合は,公的な融資制度(表3)や補助事業があるので活用する。
  • 農林漁業セーフテイネット資金は,社会的又は経済的環境の変化による経営状況の悪化や,災害,行政指導の状況に置かれている場合に利用できる。
  • 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,売上げが減少した事業者に対する主な支援制度は表4のとおり。今後新たな対策の創設もあり得るので情報収集に努める。
  • 収入保険制度への加入も検討する(対象者は青色申告者)。
表3 主な融資一覧(金利:R2.4.20現在)
表4 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う主な支援制度(R2.5.13現在)

◇‘ちゃぴおんねっとシステム’を経営改善に活用しましょう。
◇農作業事故防止や新型コロナウイルス感染防止対策を徹底し,農作業安全・健康管理 に留意しましょう。